0.遊び紙と始まりの話

はくしのじょうおう ひとりぼっちで ゆめをみる。 たいくつじょうおう くろをつかって ゆめをかく、 ゆめの せいかい I(アイ)をぬいては まちがい せかいをえがきだし。 残ったアイで カケたるやくしゃ ツイなるヤギ達 はくしに描く。 われらがじょうおう ゆめをみよ とわのぶたいの ゆめをみよ 【ある世界の童謡の一節】  ──物語(せかい)の終わりだろうか。
 血まみれの青年は必死に目を開けその有様を見ていた。身につけた鎧はすでにボロボロで、合間からはすでに致死量の血が流れている。
 首を上げる。あれはたしか――、空 だったか。
瞬きをして、また首を動かす。既にそこにはなにもない、白があるだけだ。
人が、都市が、森が、火が、煙が、空が。全てが、真っ黒な化け物達に襲われている。
それは腹を空かせた山羊達のように、ムシャムシャと世界のページを破り、喰らっていた。
 そんな中、青年は世界の片隅にまだ存在していた。
何故そうなったのか、分からないまま。ボロボロで、身体からは赤い血(インク)が止めどなく出ている。
手足も何処かへ行ってしまった。すでに亡き骸、なにも出来ず。
だけども、青年の意識だけがはっきりと、目前の惨状を受け止めようとしていた。
 化け物は、悪意もなく、善意もなく、愛も、憎しみもなく、ただただ喰らっていく。理由のない、理不尽な侵略行為。
 叫びたかった。しかし口すら動かない、鈍る身体は鉛の様に重く。
もう眠ってしまえと、己の心の何処かが闇に落ちようとした。
 どうしようもないのだから、もう目を閉じてしまえと。
 閉じれば、温かい闇がゆっくりと意識を溶かしていく。あと一段階、寝てしまえばもう起きることはないだろう。
もうどうしようもない、だから意識を手放して――
「ねぇ、君。――生きたいですか」
それは自分の諦めの悪さに引っかかり。目を開けるには、十分な声だった。