ステラテラの隅

地底と星のつぶやき兼日記です

【800字を書く力を読んだ際の課題メモ】
その日も電車は人で満杯だった。
ぎゅうぎゅうと人が詰め込まれた箱は、ぎいぎいと鈍い音を響かせながら線路を進んでいく。僕は息苦しさをごまかすように息を吐いた。そうしてかばんを持ち直し、真上にある線路図を見る。……目的地まであと3駅。そうしていると、どっと人がいなくなった。乗り換えの多い、主要駅についたからだ。僕は空いた席を見つけるとすぐに座って、汗を拭き、ペットボトルを取り出し水を飲んだ。うまい、染み渡る。押し込められていた感覚からの開放に一息つくと、目の前の少女と目があった。彼女は笑っていた、僕はきょろきょろあたりを見るけど、あんなにもいた人はだれもいなくなっていて。彼女と僕しか、この車両には居なかった。
「あなたは、どこへ行かれるのかしら」少女は反対側から語りかけてきた。
「僕は……終着駅の」
「あら、私も一緒なのよ」
「貴方も?」
僕はびっくりした、あの場所に向かうのは……僕くらいしか居ないだろうと思っていたからだ。もうすぐ廃駅になる、あの駅。
僕はどきどきと鼓動がなるのを感じていた。ペットボトルの水をもう一口飲むと、彼女に聞いてみることにした。
「じゃあ、君も…?」
 君も、……その先を言う前に彼女はまた人懐こい笑顔で答えた。
「ええ。私ーー魚だったのよ?」
 頭が真っ白になった。君もか、君も。胸の奥から様々な思いが溢れてきそうになるのに、言葉は一向に出てこない。かろうじて出てきたのは「僕もだ」という単語だけで。
「なら、私も貴方も。あの場所の終わりを見に行こうとしているのね」
 電車のアナウンスが、響く。
<この電車は、【ゆりかご水族館】行。【ゆりかご水族館】行ーー>
 僕たちは、ゆりかごの終わりを見に行くのだ。

#メモ
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